第5回地域猫オフ会イベント報告及び参考資料
【 開催日時 】平成26年5月25日(日) 午後1時半~4時45分
【 開催場所 】三鷹産業プラザ 703会議室
【イベント情報リンク】「みたか123」
http://mitaka123.com/?p=2017
【 参加者地域 】 会場の三鷹市、武蔵野市以外に、調布市 八王子市 国立市 小平市 小金井市 日野市 府中市 西東京市 立川市 国分寺市豊島区 杉並区 中野区 港区 墨田区 足立区 練馬区 江戸川区 目黒区 大田区 品川区 世田谷区 文京区 中央区 台東区 荒川区 静岡県や埼玉県、山梨県、神奈川県
この度も、遠方から多くの皆様にご参加頂きました。
【 参加団体及び参加者 】 ( イベント動員数 合計84 名 )
ご来賓として中村ひろし東京都議会議員、塩村あやか東京都議会議員のご列席賜り、ファシリテーターの荒川獣医師及びオフ会専門家アドバイザーとして、林弁護士、後藤東京都動物愛護推進員、濱谷東京都動物愛護推進員、墨田東京都動物愛護推進員、梅田(埼玉県)彩の国動物愛護推進員にご参加頂き、当日講演下さいました演者の太田獣医師と井の頭自然文化園大橋様にもご協力を賜りました。
ご来場下さいました皆様は、猫ボランティアの皆様や地域猫団体以外に、愛護団体や動物関係ネットワーク、多数の東京都愛護推進員及び杉並どうぶつ相談員、絵本作家の七園菜生様、猫BAR や保護猫カフェ経営者の皆様、ペット企業者、報道関係者、Animal Police Network、PFA 高校生グループ、帝京科学大生命環境学部アニマルサイエンス学科学生の皆様等、様々な繋がりをもつ皆様にご参加を頂きました。
【講演資料リンク】
動物園の歴史と動物園の取り組み 公益財団法人東京動物園協会 井の頭自然文化園
教育普及係長 大橋 直哉 氏 講演資料PDF リンク
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/b3e2c403-fdd7-4127-ad3a-97bed473402a/799959289c7427f009c70fd6ebf3b009
※ ご講演頂きました大橋様に、海外動向に照らし以下の講演資料一部(19 ページ)をご修正頂き、『 最終版の講演資料 』をお知らせいたします。ご来場下さいました皆様や、公開資料を既に観覧された皆様にお詫び申し上げると共に、変更内容のご確認をお願い申し上げます。
動物園のあり方(米国の基準)
・連邦政府としては、1966 年に実験動物の規制として動物福祉法が制定。以降、対象を広げつつ、適宜改訂されている。
・その他、州法などにより地域ごとの規制がある。
・北米動物園協会(AZA)の認定基準主要な目的として「最高レベルの動物福祉」
・飼育管理の徹底
・野生生物の保全、教育、研究への取り組み
AZA 加盟が動物園としてのランクに関わってきます。
AZA に加盟しているのは、北米の動物園の1/10 くらいとのこと
加盟のレベルが高いことを示している。 (修正最終版より引用)
TOKYO ZERO キャンペーンについて ~すべてのペットが幸せになれる東京へ~
東京都議会厚生委員会副委員長・東京都動物愛護管理審議会委員
東京都都議会議員 塩村 あやか 氏 講演資料PDF リンク
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/a1050041-2eb7-4a2c-b3de-e4c329d0a710/14320fa85c0f52fe000dbf0d29003ffc
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/b830f492-1056-49a8-9815-23888f5ddfcb/d8dd9cfc45875b361eb002b031cd95ad
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/9fcdfd70-311a-400e-b49d-0173c6d40a2c/ebd0bbed34d37c04b97dddfeaded1f89
※ 三鷹市飼い主のいない猫の避妊・去勢手術支援事業( 平成24 年度三鷹市動物愛護に関する事業実績全般について )の資料は、当日会場配布のみご了承頂きました資料なので、事業については右記の三鷹市HPをご確認下さい。http://www.city.mitaka.tokyo.jp/c_service/000/000755.html
≪ 来場者アンケートデータ分析報告 ≫ ( イベント動員数 合計84 名 )
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/1016fe46-d4da-4621-a417-da3ce216cf86/b7a77ecfe6a09983d5c95640b549a7bd
https://t.co/pxn483IWqk
【 報道関係よりご提供頂きましたイベント取材記事 】
http://www.evernote.com/shard/s344/sh/a0d74e28-b94f-47b9-838b-74bba4ede4d5/6344a78628acb594a050781beb026cb4
園内ふれあいコーナーで取り扱われるモルモットは、繁殖を積極的に行っていて、雄に関しては多くが殺処分となっており、その事について動物愛護と両立するのか、お考えを知りたい。又命の教育を考えるなら、演者の講演にもあった様に大人は子供に嘘をつくべきではないと思うが、見解を教えて頂きたい。
( =主な回答 私は、本件については、担当者ではないため、園としての正式な回答は、園に問い合わせていただいたほうが良いと思われます。ただ、ふれあいコーナーで飼育しているモルモットのオスの一部が殺処分になっているというのは事実であり、それを減らすべく努力をしているところです。)
繁殖した雄の殺処分を減らす為どの様な具体的努力をされるのか?
( =主な回答 オスの積極的な譲渡と、オスの去勢により攻撃性を低下させ、群れ飼育を試みております。また、繁殖についても、計画的に行っています。)
≪ 参考資料リンク ≫ ※以下数値データにつきましてはPEACE様よりご提供頂きました。
『 ふれあいコーナー 平成24 年 モルモット統計 』( 出典 PEACE )
http://animalspeace.net/zoo/inokashira_guineapigs
繁殖数161 匹(オス75 匹、メス86 匹) 死亡数87 匹(うち、45 匹が殺処分)
※詳細 http://animals-peace.net/zoo/inokashira_guineapigs_list
譲渡数25 匹全てオス 譲渡先は、幼稚園・小学校・中学校、16 校。多摩動物公園と大島公園動物園に2 匹移管
地域猫対策の推進に際して獣医師会加盟病院にのみ助成が得られるのは問題では
( =主な回答 獣医師会加盟については、都市部や地方によって事情は異なる。自治体の狂犬病予防事業は獣医師会により実施される為、当事業への協力や動物病院の経営等を考慮し、個々の動物病院で判断している。この様な獣医師会と行政との連携関係から、地域の獣医師会所属の動物病院が助成適用病院となる例は多いと考えられる。
そもそも地域で設けられた助成制度が活用しづらい問題が生じるのは、TNRの知識が不足した者が制度設計をしている背景があり、結果的に制度があっても現場で活用が出来ない事例が多い。)
※ 狂犬病予防対策推進事業参考資料リンク
http://nichiju.lin.gr.jp/about/pdf/bessatu_4.pdf
マイクロチップについての装着した動物の健康被害事例について
( =主な回答 火傷等疑われる事例の報告があるが、異物を入れる以上どの様なリスクもある事を理解し、一方で、災害等もしもの時を考えれば、災害時対策としてマイクロチップを入れるメリットは大きいと考えている。)
学校動物の初等教育の教育課程での導入の是非を問う議論はどうなっているか?
( =主な回答 動物を飼える能力のない中、学校で動物を飼育する問題は、動物福祉を思えば以前から論議を呼んでいる。現在は学校で動物を使わない動物教室が実施されており、今後縮小傾向にあると思われる。)
( =主な回答 学校での動物介在教育の効果については、議論が対立している中、縮小を求める声のある一方で、ある自治体では、獣医師会の主導で文科省研究事業としてむしろ推進している事例が報告されている。)
【 持ち回り団体 】 みたか123 協力 むさしの地域猫の会
「みたか123HP」 http://mitaka123.com/
【 次回開催情報 】 次回開催につきましては、練馬地区など候補地及び持ち回り団体が決定しだい、SNSやホームページ等にて告知致します。
≪ 地域猫に関連して取り上げられた参考資料リンク ≫
附帯決議 動物の愛護及び管理の推進に関する件 [ 衆議院環境委員会決議 ]http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/180/futai_ind.html
八、『地域猫対策』として地域猫活動の文言が盛り込まれ『効果があることに鑑み、官民挙げて一層の推進を図ること』又、『駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは動物愛護の観点から原則として認められない』とし、譲渡の機会が得られるよう最大限努めることが明記されました。
基本指針動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の一部を改正する件http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=22918&hou_id=17073
2 講ずべき施策 ア 住宅密集地等において飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の十分な理解の下に管理する地域猫対策について、地域の実情を踏まえた計画づくり等への支援を含め、飼い主のいない猫を生み出さないための取組を推進し、猫の引取り数削減の推進を図ること。
ハルスプラン 東京都動物愛護管理推進計画~人と動物との調和の取れた共生社会の実現を目指して~http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/keikaku.html
「地域の飼い主のいない猫対策の拡充」等による、動物に関わる全ての人々の自覚と適切な行動を促す為の施策展開を図る事や、動物の引取り数を減少させ、動物の致死処分数の更なる減少を目指し、譲渡拡大の仕組みづくり等の取組も推進する。
兵庫県警察 動物虐待事案等専用相談電話「アニマルポリス・ホットライン」 http://www.police.pref.hyogo.jp/sodan/animal/index.htm
【 イベント連絡先 】地域猫オフ会
web.arakawa@gmail.com
第5回地域猫オフ会 報告書
2014年6月1日
文責:東京都動物愛護推進員 後藤一平
1.第5回地域猫オフ会について
(1)第5回地域猫オフ会の概要
「地域猫オフ会」は、飼い主のいない猫対策(地域猫対策)をよく理解し、実践を行っている個人・団体を対象にし、それぞれの地域での実情を共有し解決していくイベントです。地域猫対策に日々取り組んでいる有志が持ち回りで主催しているもので、地域猫ボランティア・動物愛護推進員・行政職員・獣医師・弁護士等を含む毎回30~50 名程度の参加者があります。
第5回地域猫オフ会は、去る2014 年5月25 日(日)、三鷹市の「みたか123」の主催、武蔵野市の「むさしの地域猫の会」の協力により、三鷹産業プラザで開催されました。主催者の予想を大きく上回り80 名強の方が来場され、会場では急きょ追加の椅子を用意するほどの盛況ぶりでした。
今回の地域猫オフ会では、井の頭自然文化園の大橋直哉さんの講演「動物の福祉(愛護)と管理」、東京都議会議員の塩村あやかさんの講演「TOKYO ZERO キャンペーンについて」、NPO法人ゴールゼロ副理事長の太田快作さんの講演「殺処分ゼロは可能」が行われた後、参加者会議(グループセッション)に分かれて熱心な議論が行われました。それぞれの概要とコメントを記します。
(2)今回のテーマとその背景
第5回地域猫オフ会のテーマは、「2020 年東京オリンピックまでに、愛護動物の殺処分を廃止に!」という野心的な目標が掲げられました。
2012 年の改正動物愛護管理法では「殺処分がなくなることを目指して」という一文が入り、また衆議院環境委員会決議「動物の愛護及び管理の推進に関する件」では殺処分頭数をゼロに近付けることを目指して最大限尽力することが明記された点を踏まえて、2013 年の改正動物愛護管理基本指針では犬猫の引取り数を10 年で半減させることや、地域猫対策の推進についても明記されました。さらに、東京都でも本年、動物愛護管理推進計画(ハルスプラン)が改定され、2023 年度までに犬猫の殺処分数を2012 年度比20%削減させることや地域猫対策の拡充についても明記されました。
一方で、東京都は2020 年にオリンピック・パラリンピックを開催することとなり、世界各国から多くの方の訪日が見込まれます。しかし、50 年前に開催された東京オリンピックの際には、海外から訪日された方々が当時の我が国での動物の扱いに衝撃を受け、「日本は動物福祉後進国」というイメージが付いてしまいました。現在、確かに殺処分頭数は大幅に減少しましたが、東京都内だけでも未だに年間2,000 頭以上の犬猫が殺処分されており、殺処分ゼロには至っていません。
こうした背景の下に、今回の地域猫オフ会では、2020 年の東京オリンピックまでにどのような取組を行えば愛護動物の殺処分を廃止できるのかについて、参加者全員で考える絶好の機会となりました。3時間という限られた時間ではありましたが、最後まで白熱した議論が行われました。
2.第1部:講演
(1)井の頭自然文化園・大橋さん「動物の福祉(愛護)と管理」
最初は、公益財団法人東京都動物園協会井の頭自然文化園教育普及係長の大橋直哉さんによる50分間の講演「動物の福祉(愛護)と管理」でした。
講演ではまず、動物園の歴史についてお話がありました。近代以前の欧州の動物園は王侯貴族を代表する特権階級の富と権力の象徴として始まり、それが徐々に市民に開放されてから、学術研究の一環としての近代動物園が始まったとのことです。一方で、我が国の動物園は江戸時代の見世物小屋としての流れを受け継いでレジャーの一つとしての動物園が長期間続き、1980 年代からようやく希少動物の保護を掲げるようになったため、欧州に遅れを取っているのが現状とのことです。
また、展示方法についても、従来のコンクリートと檻・金属製の網による展示から、檻をなくしたり生態に近い飼育環境を整えたりする展示に移行しつつあるとのことです。その中では、旭山動物園の「行動展示」に象徴されるように、限られたスペースで動物の本来持つ行動を引き出すための展示を試みたり、「環境エンリッチメント」と呼ばれる動物の五感や空間に変化を持たせたりするような展示上の工夫を行うようになってきたそうです。
【筆者コメント】
かつては見世物小屋から始まった動物園ではありますが、近年では学術研究も重視し、動物福祉に配慮しつつ、限られた施設の制約の中で環境エンリッチメントを図ろうとする取組は評価できます。しかし、飼養施設の水準は動物園によって大きな差がありますし、日本動物園水族館協会(JAZA)に非加盟の動物園も少なくないなど、個々の動物園に対して十分な監視の目が届いていないといった問題点も指摘されています。現に、講演後の質疑応答の中で、講演者の勤務する井の頭文化園で子どもとのふれあいに使われたモルモットが殺処分されている点や、モルモットの過密飼育等の問題点が指摘されたくらいです。動物園側も問題点を認識してはいるようですが、抜本的な改善には至っていないようであり、更なる取組が求められているところです。
また、講演の中で、動物園関係者の中から動物園法(仮称)の制定を求める声が出ており環境省も検討しているとのお話がありました。動物園に対する法規制の強化の必要性は当然ですが、他方で動物愛護管理法の中から動物園の取扱いを切り離すことについては、動物園に対する監視の目が届きにくくなるほか、動物愛護管理法が掲げる動物福祉の観点が弱まってしまうのではないかとの根強い反対意見もあることから、更なる検討が必要であるとの感想を持ちました。
(2)東京都議会議員・塩村さん「TOKYO ZERO キャンペーン」
次に、東京都議会議員の塩村あやかさんによる10 分間の講演「TOKYO ZERO キャンペーンについて~すべてのペットが幸せになれる東京へ~」がありました。
「TOKYO ZERO キャンペーン」は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020 年までに、不幸な犬猫をゼロにし、東京を「動物福祉先進都市」としようとする運動です。オリンピックは開催国の文化の成熟度を披露する絶好の機会であり、動物福祉に対する開催国の姿勢が昨今大きな注目を集めつつありますが、一方で我が国の取組は海外に比べて不十分との指摘もあります。そこで、本キャンペーンでは、影響力のある呼びかけ人が中心となり、①8週齢規制の早期実現、②日本版ティアハイムの設立、③保護犬・保護猫の譲渡推進、に向けて個々人が活動を行っていくとのことです。組織ではなく個人の連帯による集合体であり、既存の動物愛護団体とは一線を画している、という点を強調されていました。なお、地域猫対策と本キャンペーンとの関連については、業規制や犬猫の殺処分に要するコストを下げて浮いた予算を地域猫対策に回すことで、殺処分ゼロに向けた取組を進めることができる、との説明がありました。
【筆者コメント】
前述のとおり、東京都内での犬猫の殺処分頭数は未だに年間約2,000 頭もあり、一刻も早く殺処分ゼロを目指す必要性については衆目の一致するところでしょう。しかし、それを実現するためには出口部分である返還・譲渡数を増やすのみならず入口部分である引取り数を減らす必要があり、そのためには動物の販売者・購入者の双方が飼育放棄をさせないために努力する必要があります。その点で、同じ殺処分ゼロを目指す既存のキャンペーンと一線を画し、8週齢規制(生後8週齢に満たない犬猫等の幼齢動物を親兄弟から引き離さない規制。現在は45 日齢規制)の早期実現を最も重視している点は、極めて注目に値すると感じました。
(3)NPO法人ゴールゼロ・太田さん「殺処分ゼロは可能」
最後は、NPO法人ゴールゼロ副理事長・ハナ動物病院院長の太田快作さんによる50 分間の講演「殺処分ゼロは可能」でした。
講演ではまず、最近の動物愛護の現状を見ると、殺処分数の減少や動物愛護管理法の改正など、順調に進んでいるような雰囲気もあるが、依然として毎日数百頭・年間10 万頭以上の命が失われていることに気付くべきであり、殺処分は「仕方ない」ことではないことを強調されました。その上で、殺処分される犬猫を①飼い犬・飼い猫、②野良猫、③野良犬、④飼い犬・飼い猫の産んだ子犬・子猫、⑤野良犬・野良猫の産んだ子犬・子猫、の5通りに分析し、それぞれの場合ごとに殺処分ゼロに向けた取組を行うことで、殺処分ゼロは難しい話ではない点を説明されました。
殺処分ゼロを実現するためには、行政、業界、獣医師、そして民間のそれぞれの役割を果たす必要があるとのことです。太田さんは具体的な方法として、新しく犬猫を飼う人の9人に1人が捨て犬や捨て猫を飼うことや、1都道府県当たり譲渡数を年間3,000 頭増やすことや、1動物病院当たり譲渡数を2か月に1頭増やすこと等を提案されており、それぞれの取組を強化すること等によって、速やかな殺処分ゼロは十分可能である点を強調されました。
【筆者コメント】
犬猫の殺処分頭数は、動物愛護管理法が制定された1973 年度には計120 万頭ありましたが、官民挙げた協力によって徐々に減少し、2012 年度には犬38,447 頭、猫123,420 頭の計161,867 頭(環境省調査)にまで減少しました。ただし、近年では犬の返還・譲渡数が過去5年でほぼ横ばいになるなど、減り具合が緩やかになってきており、行政やボランティアからは限られた施設では譲渡に向けた努力も限界に近付いているという話も聞こえてくるようになりました。しかし、太田さんは、官民とも努力の余地はまだ残されていることを指摘し、殺処分ゼロを早期に実現するために各々のなすべき取組を明らかにされました。もちろん、現に多くの保護犬猫を抱えているボランティアにこれ以上の負担をかけることは望ましくありませんが、不妊去勢手術の徹底や譲渡会の周知徹底など、できることを着実に実施していけば、殺処分ゼロの達成は十分可能で
あることを、改めて実感しました。
3.第2部:参加者会議
(1)分科会議
休憩後の第2部では、地域猫オフ会恒例の参加者会議(グループセッション)が行われました。
同会議は、地域猫対策の推進が謳われている今、現場でどのような課題が生じており、それを克服するためにどのような手段が必要なのかについて、参加者で解決策を話し合う場です。具体的には、4つのテーマごとに数名~10 名程度のグループに分かれ、自己紹介を行った後、各テーマについて参加者が抱えている課題を出してもらい、専門家を交えて意見交換を行い、最後に全体会議で意見交換の結果を発表し合う、という形式で行われました。今回は、全体のファシリテーターを荒川ヨシオ獣医師が務め、分科会議として①猫トラブル(アドバイザー(以下同):林太郎弁護士)、②譲渡&保護(梅田達也・埼玉県動物愛護推進員)、③TNR&獣医療(荒川ヨシオ獣医師)、④協働&制度(後藤一平・東京都動物愛護推進員)の4つを設定して、それぞれ意見交換を行いました。
分科会議では、毎回限られた時間内(今回は25 分)の中で、しばしば基本的な事実関係の確認に時間がかかって意見や論点を十分に出しきれないという課題がありました。そこで私の担当した④協働&制度のグループでは、冒頭で改正動物愛護管理法等に行政と民間の連携がどう書かれているかを説明した後、現場での問題点や意見を募るようにしました。これにより、多くの方から様々な発言を得ることができ、短時間ではありましたが有意義な意見交換を行うことができました。同グループでは、まず、ペットショップや虐待の問題をどこに伝えればよいのか分からないとの質問があり、これに対しては、対応すべき行政や警察の所在がどこであるのかを明らかにする必要があり、兵庫県のアニマルポリスが参考になるとの意見が出ました。次に、警察が動物愛護管理法のことをよく知らないとの声が上がり、これに対しては、警察内部でもよく勉強してもらう必要があるとの意見が出ました。また、不妊去勢手術の助成金の仕組みが自治体により異なるし運用が不透明ではないかとの意見があり、これに対しては、例えば都道府県単位で助成金を出せば自治体間での公平や透明性が図られるのではとの意見が出ました。最後に、行政による地域猫の普及をどのように進めるべきかとの質問があり、これに対しては、精力的に動ける公務員が必要であるが現状では属人的にならざるを得ず、まずは助成金の拡充から始めるしかないとの意見が出ました。
(2)全体会議と講評
分科会議の終了後、直ちに全体会議が行われ、各グループのアドバイザーから意見交換の結果が発表されました。概略は以下のとおりです。
①猫トラブル:エサやり禁止の看板があるので撤去してほしいとの苦情を受けた、保護した犬猫に対する騒音の苦情が来ている、等
②譲渡&保護:保護猫カフェの取組の紹介、譲渡をどのように進めていくべきか、譲渡にかかった費用をどこまで里親に請求すべきか、等
③TNR&獣医療:母猫が妊娠中の場合にどのタイミングで手術をすべきか、等
④協働&制度:ペットショップや虐待の問題をどこに言えばよいのか、警察が動物愛護管理法のことをよく知らない、不妊去勢手術の助成金の仕組みが不透明である、行政による地域猫の普
及をどのように進めるべきか、等
最後に、参加者会議の全体の講評を、前回に引き続いて私の方より行いました。私からは、改正動物愛護管理法の中で行政に引き取られた犬猫の返還・譲渡の推進、殺処分ゼロを目指すこと、警察や獣医師等との連携が明記されている点、委員会決議の中で地域猫対策の推進や殺処分ゼロに向けて官民挙げた一層の取組を図ることが明記されている点等を踏まえると、改正法や決議に記された目標を着実に達成するためには各関係者が一層の取組をする必要があるが、活動が長続きしないと殺処分ゼロの実現は困難であることから、例えば行政の施策には協力しつつも同時に行政に対し
て必要な支援を求めることを働きかける必要もある、といった趣旨の発言を行い、今回の地域猫オフ会を締めくくりました。
4.コメント(次回に向けた課題) 地域猫オフ会は今回で5回目となり、主催者の広報の甲斐もあり、参加者も過去最高の80 名強となりました。また、今回は地域猫ボランティアや獣医師や弁護士といったいつもの参加者に加えて、主要な動物愛護団体の関係者、動物取扱業者、自治会・町内会、東京都議会議員(中村ひろしさん、塩村あやかさん)など、地域猫対策に大なり小なり関連する多くの関係者が集まり、地域猫オフ会に対する関心がこれまでになく高まっていることを実感しました。一方で、参加者が大幅に増えた分、限られた時間内では、現場で抱えている参加者一人一人の話をじっくり聴くことが難しかったこともまた事実です。これについては、参加者会議の時間を長く取るといった時間配分の見直しなど、次回以降の地域猫オフ会に向けた運営上の課題があると考えます。 また、上記の全体の講評の中でも触れましたが、改正動物愛護管理法の施行に伴って、現在東京都をはじめ各自治体では地域猫対策の一層の推進が求められているところです。委員会決議にもあるとおり、地域猫対策には猫に係る苦情件数の低減及び猫の引取り頭数の減少に効果があることを踏まえて、行政に対しては助成金の拡充など更なる取組を求めていく必要があることは言うまでもありません。と同時に、地域猫対策に携わっているボランティア同士の横の連携が不十分であることは以前より指摘されてきたことでもあり、飼い主のいない猫に関する問題や譲渡に関する情報共有を図っていく必要があることを、自省も込めて、この機会に指摘しておくべきでしょう。 ここで、第5回地域猫オフ会を主催された「みたか123」の牧野代表、協力された「むさしの地域猫の会」の西村会長には大変お世話になりました。そして地域猫オフ会の連絡係である「三東CS&With」の舘山代表には、地域猫オフ会の企画から開催に至るまで幅広くご尽力くださりました ことを申し添えます。 最後に、今回ご来場された全ての皆様に、主催者に代わりまして篤く御礼を申し上げ、第5回地域猫オフ会の報告とさせていただきます。ありがとうございました。 (了)__
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